JPN11 ポータルに戻る

グループリーグで見えた「森保ジャパンの設計図」
— 守備組織と前線プレスを読み解く

オランダ戦2-2、チュニジア戦4-0、スウェーデン戦1-1。グループF2位でノックアウトステージへ進んだ日本代表の3試合を、選手コメントと試合経過から戦術的に読み解く。数字の表面だけ見ていると、見えてこないものがある。

サッカーの戦術の設計図を読み解くイメージ。作戦盤とピッチ、選手の位置を示すマーカーと連携の矢印の線画。

チュニジア戦「4-0」が見えにくくしたもの

4-0という結果は気持ちがいい。快勝だったのは事実だ。ただ、グループリーグを3試合通して見ると、チュニジア戦の圧勝が前後の試合の課題を少し見えにくくしている感がある。

初戦のオランダ戦は2-2の引き分けだった。オランダ相手に2点を奪う攻撃力は高く評価できる。しかし同時に2点を失った。GK鈴木彩艶がオランダのFWマレンのシュートを前半3分に止め、同34分のヘディングも阻止したにもかかわらず、2失点した。つまり、GKのビッグセーブがあった上で2失点という事実がある。その意味で、初戦の守備には整理すべき課題があった。

最終節のスウェーデン戦では1-1。DF板倉滉が前半39分に負傷して退いたことで守備の再編が必要になり、長友佑都が後半30分に入ってラインを締めた。試合展開と選手交代が守備スコアに影響したことは想像に難くない。

3試合の合計は、得点7・失点3。この数字自体は悪くない。しかしグループリーグ3試合という少ないサンプルは、守備組織の堅牢さを証明するには短すぎる。「4-0」の印象に引っ張られず、各試合の失点場面を別個に見る必要がある。

試合 対戦相手 結果 主な特徴
GS 第1節 オランダ 2 — 2 GKビッグセーブあり。2失点
GS 第2節 チュニジア 4 — 0 圧勝。無失点
GS 第3節 スウェーデン 1 — 1 板倉負傷交代。1失点

※試合結果はグループリーグ終了時点のもの。最新の公式情報はFIFA公式サイトで確認を。

GKを起点にしたビルドアップ — 鈴木彩艶が担うもの

現代サッカーにおけるGKの役割は、かつての「最後の砦」から変わっている。ペナルティエリア内でのセービングだけでなく、最終ラインから攻撃を組み立てるビルドアップへの参加が求められる。森保ジャパンでも、GK鈴木彩艶がその役割を担っている。

鈴木彩艶はグループリーグを通じて安定したパフォーマンスを見せた。オランダ戦でのセービングはすでに触れたが、それと同じくらい注目したいのが、守備ラインの後方からボールを動かす際の判断の落ち着きだ。プレッシャーをかけてくる相手に対して慌てず、ショートパスとロングフィードを使い分ける。それが前線のビルドアップに時間的な余裕を生む。

本人もそこへの意識は高い。ブラジル戦を前にした取材では、「負けないためのセーブ」から「勝つためのセーブ」へと意識を切り替えている旨を語っている(出典:ゲキサカ、2026-06-28)。グループリーグは「ミスをしない守り」が最優先だったが、ノックアウトステージでは決定機を作り出す守護神としての役割が求められる——という認識の表れだ。GKがそういう言葉を言える状態にあることは、チームとしてポジティブな要素だと筆者は思う。

3バック型の設計と中盤のフィルター

グループリーグの選手起用を整理すると、日本が3バック型の可変システムを軸に戦っていたことが見えてくる。スウェーデン戦の日本は瀬古歩夢・板倉滉・伊藤洋輝の3センターバックで入り、板倉がその中央を担った。左サイドには本来ウインガーの中村敬斗が置かれ(記録上のポジション表記は左MF)、後半30分にはDF長友佑都が投入されている。前線の選手をサイドの一列低い位置に置く配置は、3バックの外側を補完する使い方として読み取れる。

この設計の中でキーになる役割の一つが中盤のフィルターだ。ボランチ(またはダブルボランチの一角)として入るMF佐野海舟は、オランダ戦・チュニジア戦に続けて先発した一方、最終節のスウェーデン戦では出場していない。グループリーグでの消耗を抑えたうえでノックアウトステージへ入った形だ。本人は「相手も大事だけど、自分たちがやってきていることを自信を持ってやっていければ」と語っており(出典:ゲキサカ配信『“フル温存”完全体でブラジルに挑む佐野海舟』2026-06-28、Yahoo!ニュース掲載分で確認)、ブレることなく同じ設計で戦う意思を示している。

中盤のフィルターが機能するとき、最終ラインへの直接的なプレッシャーが減る。それがGKの落ち着きにも連鎖する。逆に中盤のスクリーンが外れると、ラインが押し込まれ、GKへの負荷が増す。その連動性が、3試合の守備の数字を読む上での視点になる。

「攻めている時のリスク管理」— 鎌田のコメントが示す設計思想

MF鎌田大地はブラジル戦前の取材でこう語った。「攻撃はそんなに心配していない。どちらかというと攻めている時のリスク管理。一発があるので、そこら辺かなと思う」「リスク管理の部分をうまくしないと難しい試合になる。どれだけ人数をかけて攻めるのか、その辺が大事」(出典:ゲキサカ『「攻撃はある程度できる」鎌田大地が考えるブラジル戦の肝「どれだけ人数をかけて攻めるかが大事」』2026-06-28)。

これは一見、守備的な発言に聞こえるが、戦術的には正確だ。攻撃で何人を前線に送り込むか——それはそのまま、ボールを失った後に何人で守れるかを決める。チュニジア戦での4-0は相手の守備強度も影響しているが、日本が前に出た時間帯に攻守の人数バランスを保てていたからこそ、カウンターを受けずに済んでいた部分もある。

逆にオランダ戦では、攻撃に人数をかけた結果、背後を突かれるシーンがあったと想像できる。オランダのカウンターの質は高く、ラインの背後の空間を使わせてしまった可能性がある。鎌田の言葉はグループリーグの経験を踏まえた整理でもあるはずだ。

FW前田大然も「個人個人の技術が高い。でも日本の組織で戦えば勝てると思う」と語っている(同)。個の力ではなく、組織としての攻守のバランスを保つことが、この代表チームの戦い方の核心にある。それがグループリーグ3試合で少しずつ可視化されてきた。

筆者メモ

「リスク管理」という言葉は後退的に聞こえることもある。しかし攻撃時に前線へ何人を投入し、何人をカバーに残すかという判断は、現代サッカーにおいてチームの戦術的知性を最もよく映す問いの一つだ。それを選手が自分の言葉で語れるのは、チームとして同じ絵を共有しているからだと思う。

ノックアウトステージ以降で問われること

一発勝負のノックアウトステージは、グループリーグとは別のゲームだ。90分で決まらなければ延長、それでも決まらなければPK戦。試合の構造が変わると、戦術の選択肢も変わる。

グループリーグで積み上げてきた守備組織と攻守のバランスが、そのままノックアウトステージでも機能するかどうかは、相手の戦術と試合の流れによる。板倉の負傷はコンディション面の懸念材料だが(本人は「状態は大丈夫」としている。同)、スターターの人選がどうなるかは実際に試合を見るまでわからない。

筆者が3試合から読み取ったのは、「完成された守備」ではなく「整備中の守備と攻撃の設計」だ。まだ完全ではない。しかしその設計が何を目指しているかは、3試合を通じてかなりクリアに見えてきた。ノックアウトステージの各試合がその設計にとっての実験になる。

確認事項

グループリーグ以降の試合結果・順位・選手の出場状況は変わっています。最新情報は必ずJFA公式(SAMURAI BLUE)およびFIFA公式サイトでご確認ください。

参考

  1. JFA 公式 — SAMURAI BLUE
  2. FIFA公式 — ワールドカップ2026
  3. Wikipedia「2026 FIFA World Cup Group F」(3試合のスコア・順位表・先発と交代の記録)
  4. ゲキサカ「攻撃はある程度できる」鎌田大地が考えるブラジル戦の肝「どれだけ人数をかけて攻めるかが大事」(2026-06-28配信)
  5. ゲキサカ「今度こそ勝利につながるゴールを…2戦連発狙う前田大然、ブラジル戦へ『隙はある』」(2026-06-28配信)
  6. ゲキサカ配信の鈴木彩艶・佐野海舟・板倉滉のコメントは、Yahoo!ニュース掲載分(いずれも2026-06-28配信・ゲキサカクレジット)で内容を確認した。ゲキサカ側の記事URLは特定できていない。
ZUBARY
1画面で、ズバリ。
検索・AI・買い物を、意図で最短ルーティング。
ZUBARY を開く →
zubary.com
unanai.com占い 10i.jpランキング